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市場のトレンド

360iResearchのレポートによると、フィンテック・ブロックチェーン市場規模は2022年から2030年にかけて35.9%の年平均成長率で成長し、2022年の55億米ドルから2030年には647億米ドルに達すると予想されています。

内容別でみると、UPCXがドメインとする「Payment, Clearing & Settlement」および「Cross-Border Payment and Exchange & Remittance」は合計で2022年が57.6%、2030年が56.8%と高い比率を維持しながら推移すると予想されており、これはフィンテック・ブロックチェーン市場規模から計算すると、2022年の32億米ドルから2030年は368億米ドルと大きく成長することを意味します。

Fintech Blockchain Market Size

Fintech Blockchain Market Size by Application

また、前述のフィンテック・ブロックチェーン市場の拡大は主にプライベートセクターが主導していると考えられますが、一方、パブリックセクターにおいてもCBDC(Central Bank Digital Currency)の発行という注目すべき事象があります。

Atlantic Councilのレポートによると、2020年10月にバハマが世界初のCBDCを発行したのを皮切りに、既に11もの国によって発行が完了し運用が行われております。日本、アメリカ、中国、EUといったハードカレンシーを発行する国・経済共同体においてもCBDCの開発・実証が進行中であり、この潮流は不可逆的と考えられます。

CBDC Progress Overview

世界各国においてCBDC発行の機運が高まった背景としては、Meta社(旧Facebook社)が発行を検討したDiem(旧Libra)の存在があったと言われております。Meta社というプライベートセクターを代表する巨人に、決済・送金といった資金流通のイニシアチブを奪われかねないとパブリックセクターが危機感を抱いたことに端を発しております。当時はRipple社が発行するXRPが海外送金というシーンにおいて存在感を増しており、パブリックセクターとしては、再度後塵を拝する訳にはいかないという事情もあったと推察できます。

このように、現在までの決済・送金シーンにおいては、旧来からのメインプレイヤーであるパブリックセクターに対し、ブロックチェーン技術を基盤とした暗号通貨を駆使するプライベートセクターが新しいプレイヤーとしてチャレンジを行い、一部の分野に於いては脅かすだけに留まらず先行する状況となっております。今後もプライベートセクターとパブリックセクターは互いを牽制しながらも、それぞれの優位な点を進化させながら補完し合い、市場の拡大に貢献することとなるでしょう。

そのような状況の中で、決済・送金シーンに用いられる暗号通貨が備えるべき資質として、暗号通貨自体の価値が短期に過度に変動しないということを求められるのは想像に難くありません。現在でもTether社が発行するUSDTなどのステーブルコインがその役割を果たしており、フィンテック・ブロックチェーン市場の拡大に伴いその需要は増大すると考えられます。

ただし、現状のフィンテック・ブロックチェーン市場におけるステーブルコインの大半は、裏付資産として主に法定通貨を用いることによって信用力を得ています。言い換えれば、未だプライベートセクターはパブリックセクターの庇護下にあるとも言えます。また、限られた数の企業が発行するステーブルコインのみしか存在しないとなれば、結局は企業の信用力に依拠する結果となり、WEB3が標榜する分散化の達成は難しいでしょう。このような状況を打破するためには、信用力の源泉を法定通貨だけに依らない、例えば現実世界に存在するコモディティのような様々な資産クラスを担保資産とするステーブルコインが必要となるでしょう。更には、誰もがステーブルコインの発行体となれるプラットフォームが必要となるでしょう。